「緊張してきた、どうしよう……」
こんな風に、一度、緊張しはじめたら、
落ち着こうと思っても、緊張が増すばかり。
プレゼン、大会、試験などで
力が発揮できず、悔しい経験や
恥ずかしい思いを
したことが
ある方も多いかもしれません。
この記事を書いている私は、
男子新体操の世界で
18年間の競技人生を過ごし、
全国大会で12度の優勝を経験しました。
毎日がプレッシャーと緊張との戦いで、
心理(メンタル)をどれだけコントロール
できるかが、結果を左右しました。
緊張を味方につけるために
18年間で多くのことを試してきた経験から、
私が実際に行っていた、
本当に“使える”緊張しない方法を
ご紹介します。
そして競技人生を終えてからは、
人の
メンタル面のサポートをしたいと考え、
心理学NLPを学び、トレーナーになりました。
そこから得た、緊張の根本にある
「過去の体験を克服していく方法」
についても、NLPの視点で
紹介していきます。
1.「緊張しない方法」本当に使える3つを厳選
この章では、私が実際に行っていた「緊張しない方法」を3つ厳選してご紹介していきます。
学生の頃は、なぜこれが効くのかわかりませんでしたが、心理学を学んでから、そのメカニズムがわかり、「なるほど」と納得がいきました。
- 初の取引先への商談やプレゼン
- 人前でのスピーチ
- 受験や面接
- スポーツの試合
- コンクールの本番
こんな風に、様々な場面で使えますので、ぜひ試してみてください。
1-1.表情や姿勢を変える
「表情や姿勢を変える」
単純に聞こえるかもしれませんが、この手法は強力です。
なぜなら、この手法は脳の仕組みを逆手に取って、脳をうまく騙すことで緊張をほぐす、ということを狙いとしているからです。
その脳の仕組みとは、私たちは無意識のうちに、心と身体の状態が一致するようにできている、というもの。
そこで試しに、「落ち込み、悲しんでいる人」をイメージしてみてください。
多くの場合、目線は下を向き、身体はだるく重そうな感じがして、今にもため息が聞こえてきそうな姿勢をしていることでしょう。
逆に、「喜びに満ちて、活気に溢れている人」をイメージした場合、上記のような人物像が浮かぶことはないはずです。
そういう人はむしろ、目線は上で、立ち振舞いは軽やか。「よし!」という元気な声も聞こえてきそうな感じがしますよね。
つまり、目線は下を向き、身体はだるく重そうな感じがして、今にもため息が聞こえてきそうな姿勢をしている人は、
決して「喜びに満ちて、活気に溢れている人」ではないと言えそうです。
こんな風に私たちは、心の状態と体の状態が、二つでセットになるような仕組みがはたらいている、と考えられているわけです。
このメカニズムを逆手に取れば、「体の状態を変えれば自ずと心の状態も変わる」ということになります。
僭越ながら私の経験でお伝えしますと、試合の前に緊張している時こそ、
顔全体を使って満面の笑顔を意図的に作ってから、本番の会場まで胸を張って堂々と歩くようにしていました。
そうした習慣をつくり、実践することで脳を騙し、緊張している状態から自信満々で余裕がある状態へ、簡単に切り替えることが可能になっていきました。
シンプルな手法ではありますが、自分の意志で緊張をほぐすことができるので、繰り返し実践すれば非常に強力な手法だといえます。
1-2.「緊張」を身体の中から吹き飛ばす
二つ目は、「緊張」を身体の中から吹き飛ばすという方法です。
これも効果は抜群で、面白いように変化を感じられると思います。
簡単に例えると、この手法の原理は「痛いの痛いの飛んでけー」です。
あなたも子どもの頃に、親や大人にやってもらったことがありませんか?
転んで大泣きしている子どもにやってみると、様子が落ち着いたり、不思議と泣き止んでしまうこともあります。
「痛いの痛いの飛んでけー」の仕組みは、
- 子どもが感じている「痛み」をイメージの中だけでも身体から切り離す
- 手を振りながら「痛み」を遠くに飛ばす動作を同時に行う
こうすることで、実際に「痛み」が飛んでいったように錯覚をさせるのです。
これと原理がよく似ているのが、
実践心理学NLPの「サブモダリティ・チェンジ」という手法です。
ここでNLPについて少し触れておきますと、NLPとは別名「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる最新の心理学です。
元はセラピー手法として、心に深い傷やトラウマ(PTSD)を負った兵士たちの治療のために用いられ、
際立って効果を発揮したことから注目されるようになりました。
現在では、世界中のビジネスシーンやスポーツの世界でも活用されており、日本ではすでに2万人を超える方が学んでいます。
私も選手時代に、全国レベルの選手やコーチから教わったのが、知るきっかけでした。
さて、話を戻します。
サブモダリティ・チェンジは、
- 感情や思い込みを、色や形、音などの抽象的なイメージに例える
- そのイメージを変化させたり、取り去る
このように、イメージを変えることで、感情や思い込みを変化させていきます。
セラピーでの例をご紹介しますと、
例えば、イライラしている人に、その「イライラ」を感じる場所や色、形などを尋ると、
「お腹のあたりに黒くてトゲトゲしたものがあります」と答えました。
またある人が、幸福感や愛情を感じたときに、それを感じる場所や色、形などを聞いてみると、こう答えました。
「左胸のあたりにぼんやりとオレンジ色に光っていて、
例えるなら小さい太陽のような、かすかにあたたかいものがあります」
このように、まずは緩和させたい感情などを、身体の中にイメージして、そのイメージを変化させるのです。
もちろん「緊張」でも効果があります。
体験していただくのが一番ですので、このまま読み進めながら一緒にやってみましょう。
① 最初のステップは、実際にご自身が緊張している時の身体の状態をイメージしてみてください。
例えばこんな風に感じるかもしれません。
- 硬直して上手く身体が動かない
- 頭の中が真っ白になる
- 心臓の音がドキドキと大きく聞こえる
② 次のステップは、その「緊張」をイメージで表していきます。
身体のどの部分で感じ、どんな色や形、大きさをしているでしょうか?
例:左胸の辺りに、拳一つ分くらいの黒くどろっとした球体がある
③ 最後のステップは、そのイメージを身体の外に追い出していきます。
一度で出し切れない場合は、何度も繰り返し行うことをおすすめします。
余談ですが、選手時代の私は、
身体全体をフラスコのようなものであるとイメージし、
入り口の部分から黒い球体を押し出していくイメージをして、身体から「緊張」を取り除いていました。
すると、不思議なことに呼吸は整い、頭もクリアになって身体も落ち着いた状態にすることができました。
「この一連のステップを行うと緊張がなくなる」
と脳が学習していき、より効果も強化されていきました。
1-3.本番を具体的にイメージする
三つ目は、本番を具体的にイメージするという方法です。
「練習は本番のように。本番は練習のように。」
このような言葉がありますが、練習の時点でいかに本番と同じ状況を作れるのか、ということが非常に重要なポイントになってきます。
そうすると、本番だから緊張する、ということがなくなります。
「想像力」がカギとなってくるわけですが、ただイメージするだけでは、中々うまくいきません。大切なコツをご紹介します。
それは、「環境面」と「メンタル面」の2つの視点でイメージを作るということです。
「環境面」というのは、いわゆる五感を通して得られる情報のことです。
例えば私の場合では、試合本番の会場やホールに実際に足を運びます。
本番と同じ景色や感覚を一度体験することができ、練習の際に本番をイメージすることが比較的簡単になります。
本番の会場にいくことができない場合は、
インターネットで会場の写真を見たり、自分の頭の中で様々なパターンを想像しておきます。
練習と本番の環境の差異を、できる限り少なくすることです。
次に「メンタル面」についてです。
精神的な状態も、本番と同じ状況を鮮明にイメージすることです。
では、どうやって本番と同じ(近い)状態を作り出すのかというと、1-1でもご紹介したように、姿勢や行動を変えるのです。
私は、練習で失敗してしまった場合、部室に行って無理やり泣く(涙を流す)ようにしていました。
これは、この一度のミスが勝敗を分けてしまうこと、
本番だったら優勝を逃していたのだと鮮明に想像するためです。
涙を流し、ミスしたことの重大さを再認識することができると、試合のような緊張感が生まれます。
練習で本番と同じ精神状態を作り出すことは、非常に難しいことなので、
あえて泣くという行動をすることで、練習と本番を限りなく近づけていました。
本番だから緊張する、という状態を無くしていくことができます。
私が実践していた3つの方法は以上です。
これらを行う上でのポイントは、いざ本番!という時にいきなりやるのではなく、日頃から、ことあるごとに実践して慣らしていくことです。
1-1で「脳をうまく騙す」とお伝えしましたが、脳の仕組みをうまく活かすために、繰り返して学習させていくことが大切だからです。
次の章からは、「緊張」をなくしていくために、もっと深く掘り下げてお伝えしていきます。
これは緊張に限らず、いざという時にミスしてしまう、などの悪いパターンにも有効で、脳と心の仕組みを知れば、変えていくことができるのです。
2.緊張を克服するために…
緊張しないようになりたい。
とはいえ、緊張を0にすればいいか?と言うとそうでもありません。
最大のパフォーマンスを発揮するには、適度な緊張状態が必要だと言われますので、まったく緊張感のない状態はかえってよくありません。
それでも私たちが、緊張を克服したいと思う大きな理由は、
「緊張すると、失敗する」
「緊張すると、いつも通りの力が発揮できない」
「緊張している状態が恥ずかしい」
このように、緊張と悪い結果が結びついているからではないでしょうか。
そこで、この結びつきができてしまった脳のメカニズムを理解して、緊張を味方につけられるように変えていきましょう。
2-1.緊張する理由は?
そもそも緊張とは、「恐怖」「不安」などを感じた時に、人間の本能が危険を知らせてくれているサインのようなものです。
ですから「人前に立つのが緊張する」という人の場合、人前に立つことに「恐怖」「不安」を感じていると考えられます。
では、どうして人前に立つことに恐怖や不安を感じてしまうのでしょうか?
その原因は、過去の体験、そして私たちが自分自身に対して書き込んだ「プログラム」にあると考えられるのです。
2-2.悪循環を生み出すプログラムの正体
私たちは生まれてから多くの経験をし、その経験すべてが、記憶として脳(心)に書き込まれていきます。
そしてNLPの視点では、記憶だけでなく、その経験から作った「思い込み」も書き込まれていくと考えられています。
「経験・体験」+「記憶」+「思い込み」
この一式がプログラムされていくという考えです。
例えば…
子どもの頃に、徒競走で1位になったとします。
嬉しさや誇らしさを感じるでしょうし、周囲からも「足が速いね」などと言われたりするでしょう。
それらの経験、記憶と一緒に「自分は足が速い」という思い込みも作られ、自分の脳にプログラムされていきます。
再び走る機会があると、そのプログラムの通りの結果になっていくと考えられるのです。いい結果を生んでいく好循環だと言えるでしょう。
では、人前に立つと緊張して、うまく話せない人がいるとしましょう。
この場合はおそらく、
- 大勢の前で失敗した
- 恥をかいた
どこかでこのような経験をして「自分はプレゼンが苦手だ」とか「人前に立つと恥をかく」という思い込みがセットになってプログラムされたと考えられます。
すると、人前で話しをするとなった途端に「また失敗して恥をかくのでは…」と不安になり、どんどん緊張が増していくのです。
つまり…
緊張する
↓
プレゼンがうまくいかない
↓
思い込みが強化されて不安が強まる
↓
緊張がさらに強くなる…
このような悪循環が起こっている可能性が高いと言えるでしょう。
2-3.緊張との付き合い方
ここで緊張についてまとめますと、
緊張=悪いこと
緊張しない=良いこと
このように一概には言い切れないということです。
私にとっての最初の失敗体験は、
「幼稚園の跳び箱の発表会で大勢の人の前で大失敗をした」
というものでした。
思い返してみると、この体験があってから、大勢の前で何かを発表することに対して「緊張する」という感情が生まれたと思います。
この発表会で失敗する前は、私の頭の中に「緊張する」という概念はありませんでした。それにも関わらず、大勢の前で大失敗してしまうということは、
緊張したら失敗するわけではなく、緊張しなかったからといって成功するわけでもないのでしょう。
適度な緊張は、良いパフォーマンスのために必要です。
本当に大事なのは、過去の失敗と結びついて生まれる緊張を無くしていくことではないでしょうか。
先ほど挙げた、人前に立つことに不安を感じる場合であれば、
「不安」の感情を取り去ることに焦点をあてることで、不要な緊張が抑えられていきます。
3.いらない緊張は克服しよう
NLPには、まさに不安や緊張を克服できる、「ビジュアル・スウィッシュ」という手法がありますので、最後にご紹介したいと思います。
イメージを使って、過去の嫌な出来事に紐づいた、不快な感情を緩和していきます。
スポーツの世界では、イメージトレーニングが浸透していますので、スポーツ経験者であれば、馴染みがあるかもしれません。
簡単に説明しますと、以下のようなステップを数回行います。
- 過去の嫌な出来事を「カラー」の絵のようにイメージする
- その出来事が「こうだったら良かったのに」と思う、望ましい状態にして「白黒」の絵のようにイメージする
- 息を吐きながら、2つの絵の「位置」を入れ替える
- ①の絵は「白黒」に変化させて、遠くに飛んでいくようにイメージする
- ②の絵は「カラー」に変化させて目の前に大きくイメージする
人前に立つと緊張して、うまく話せない人であれば、失敗してしまった時を再現したイメージと、成功したイメージで行います。
2つのイメージの位置や色を変えることで、記憶に紐づいた感情を変化させていくという、セラピーならではの手法をご紹介しました。
私たちは、経験から多くのことをプログラムしています。
そして今回の「緊張」のように、プログラムは後から変えていくことが可能なものがほとんどです。
うまくいかないプログラムを、いいプログラムに変えていくことで、もっと本来の能力が発揮できるようになったり、
メンタルをコントロールすることもできるようになります。
このように、人生を豊かにしていく「秘訣」のような手法がNLPにはたくさんありますので、
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最後に
18年間の競技人生を通して実感したことがあります。
何かを成功させたり、いい結果を出すこと、満足いく自分になるためには、メンタルをいかにコントロールできるかが決め手になる、ということです。
今日ご紹介した方法に真剣に取り組んでいただくことで、緊張をうまく味方につけられるようになっていくはずです。
ここぞという時に、自分本来の力を発揮したいと思われる方や、緊張で失敗してしまう、うまくいかない、と悩んでいる方は、ぜひ試してみてください。
ご紹介した方法が、あなたの役に立てば嬉しく思います。
著者:安藤 梨友(あんどう りとも) |
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男子新体操を4歳から22歳まで続け、現役中に全国大会で12回優勝した経験をもつ。全米NLP協会認定トレーナー。 スポーツを通して、多くの一流の選手とそうでない選手に出会い、一流の選手とは結果を残すだけでなく、人柄や生き方が尊敬される存在だということに気づいた。 心理学NLPのトレーナー資格を取得し、スポーツと人間心理を知ることで得た、実践的な学びを広めようと執筆に臨む。 |